見方を変えるスキル
2025/09/30 保険
家計と暮らしと住まいの相談室で相談員をしている鶴田明子です。
今回は、私が所属するもう一つの団体、NPO法人ペアレント・スキルアップ福岡のオリジナルカードのご紹介。
『ワタシのミカタ』というリフレーミングカードです。
「見方(ミカタ)を変えて私(ワタシ)の味方(ミカタ)になろう」という目的で作られました。
目次
NPO法人ペアレント・スキルアップ福岡とは
このNPO法人はアドラー心理学をもとに作られた、親子関係をより良くするコミュニケーションのプログラムを学び、資格を取り、多くの人にそのスキルや考え方を伝える活動をしています。
親子関係をよくするために学び始めたプログラムでしたが、今では人間関係全般に使える手放せないスキルとなりました。
以前、ある心理療法家の方の話を聞きました。
「人の悩みごとのトップ3は、①お金、②健康 ③人間関係ですが、その人の周りに良好な人間関係があれば、お金の問題も健康問題も大した問題ではなくなります。」ということだった。
とても納得しました。
お金の問題も健康問題も、根本の問題解決はしなければいけないけれど、良い人間関係のおかげで、適切な問題解決の糸口が見つかったり、気持ちを聴いてもらえたりすることで、大きな不安から解放され、自分自身が気持ちを落ち着かせ、前向きに行動できたりするのだと思います。
そういう意味でも人間関係を良好にするスキルをもっていることは、人生を豊かに幸せにすることなのです。
大切な人間関係
数ある人間関係の中で、誰との人間関係が大切なのでしょう?
親、子ども、パートナー、職場の人…、色々な人が思い浮かぶでしょう。
けれど肝心な人をお忘れではないですか?
実は「自分自身」との関係がもっとも大切なのです。
いつも自分に対してダメ出しをしていませんか?
「今のままの自分ではダメ、もっと頑張らないと。」などと思っていませんか?
いつも他人と比べ、他人の目を気にして、自分らしさを否定していませんか?
大切な自尊感情
大事な事は、自分が自分のことをちゃんと「私は私で大丈夫。」「私なりに頑張っていることもあるよね。」と思えていること。これを自尊感情とか自己肯定感と言います。
誤解しないでもらいたいのは、「自分は万能で、素晴らしい!」という気持ちを「自尊感情」と言っているのではありません。
人は誰でも長所もあれば、短所もあります。
その短所さえも含めたありのままの自分に「OK」を出せること、「ま、いっか。」と思えること、「自分のことを好き」と思えることなどを言います。
自分の短所欠点も含めて自分のことを受け入れていること(自己受容)ができると、他者(他人)のことも受け入れること(他者受容)ができ、良い関係が築けます。
けれども日本の子どもの自尊感情は世界的に見てとても低いという調査結果があるのをご存知でしょうか。
それはとても残念なことです。
自尊感情を傷つける『しつけ』
コミュニケーションを学び始めて感じたことは、子どもは「愛情」があるだけでは心が健康に育たないということでした。どんなに愛情があってもその表現の仕方を間違えると子どもの自尊感情は傷つけられてしまいます。
思い起こせば、私自身も子どもの時、自尊感情はとても低かったと記憶しています。
親の愛情は感じていました。けれど日々の関わり方が私の自尊感情をどんどん下げてしまうものだったと、学んだ時に確信しました。
そして私も同じ間違いを犯していたのです。
その間違ったコミュニケーションの代表が子どもへの「ダメ出し」です。
もちろん親は子どもをしつけなければいけません。大事なわが子を立派な大人に育てようというのは子を思う親心には違いありません。けれど、その時に①子どもの失敗を大きく取り上げ、②できていないことを厳しく指摘し、③大きな声で怒ってしつけてしまうこと、誰しも経験していると思います。
これすべて、子どもの自尊感情を傷つけてしまうことにつながります。
ではどうやってしつけるのでしょうか。
しつけの目的
しつけの目的はその子が人生を生きていくのに困らないように、自分のための良い生活習慣を身につけ、他人に対する思いやりをもった行動ができるようになることです。
一番は、自分自身が大切な存在だと認識できることなのです。
子どもは失敗します。その時に失敗を怒るのではなく、どうすれば上手にできるようになるか、一緒に考え、優しく教えていくことです。繰り返し、繰り返し、何度でも。
怒っている時、子どもにつたわるのは「あなたはダメな子。私はあなたのことが嫌いです。」というメッセージ。
いくら言葉で「あなたのことが大事だから怒っているのよ。」と言っていても、怖い顔と大きな声から受けるメッセージの方が子どもの心に残ります。
そんな毎日の積み重ねで子どもは自尊感情が低くなってしまうのも無理はありません。
見方を変えるリフレーミング
そんな時に役に立つのがこのリフレーミングカード『ワタシのミカタ』。
60枚のカードの一面には、ネガティブワードが書いてありますが、その裏面には同じことをポジティブに言い換えた言葉が書いてあります。
たとえば、『飽きっぽい』というカードの裏面には『見極めが早い』と書いてあります。
『怒りっぽい・短気』というカードの裏面には『正義感が強く、自分の気もちに正直』と書いてあります。
同じことでも見方を変えるとダメだと思っていた自分の性格も、ちょっといい風に思えてくるから不思議です。
もちろん自分だけではなく、家族や友人、知人に対する見方も変えられます。
仕事に時間がかかるあの人も、「仕事が遅く使えないヤツ」と思うのか「仕事が丁寧で時間をかけて仕上げる人」と思うのかでは、その人に向けたまなざしも表情も違ってくるはずです。
入り口が違えば出口も当然違ってきます。
万人と仲よくする必要はありませんが、せめて自分の身近な大切な人に対して少し見方を変えてみませんか。きっと関係はよくなるはずです。
けれどそれにはちょっと練習が必要かもしれません。
ある本にこう書かれていました。
『危険をいち早く察知し回避する能力は、生きものとしてDNAに組み込まれたもの。身近にある‘マイナス’を見つけるのは得意なのです。
なので、ダメ出しは「本能」ですが、ほめるのは「意思」です。』と。
人間は動物と違い本能だけで生きているのではありません。意思をもって、人との関係、自分との関係を良くしていきましょう。
人に対する目が、優しくなること請け合いです。
親子のマネーカウンセラー 鶴田 明子